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女は抱かれて刀になる
第5章 刀匠の武器
「刀に女と同じ価値がないなら、刀を突っ返せばいいだけだ。だがお前は、どちらも総取りしようとした。それは刀に価値を見出したからじゃないのか? 刀は欲しい、だが女は渡したくない、だからなりふり構わず暴力で黙らせようとした。違うか?」
「……それの何が悪いのですか? 僕達の世界で、約束なんてあってないようなものでしょう。極道相手に正論が通じると思う方が愚かなんです」
「まあ、悪くはねえよ。だが、それはお前がいつも言う『美しい』行動なのか? 自分の信念一つ守れない奴に、価値なんてあるのか」
菊は拳を握り締め、唇を噛む。そしてしばらくすると、観念したように大きな溜め息を吐いた。
「――分かりました、認めればいいんでしょう。近藤虎徹、早くその刀をよこしなさい。あなたが持っていては、交渉が成立しないでしょう」
怒気の籠もった声と共に、菊は虎徹に手を差し出す。虎徹は刀を鞘にしまうと、すっかり顔の崩れた菊にそれを差し出した。
「なんだ、お前刀気に入ってたのか。余裕ぶった態度だから、全く気付かなかったな」
虎徹が意外そうに呟けば、不機嫌な菊の瞳がますます鋭くなる。