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女は抱かれて刀になる
第6章 明日も、あさっても
「そんな、ボクは謝られる立場じゃないです! 菊さんに甘えて援助を受けてたんだし、端から見たら……ヤクザの女だったんだから」
「いいえ、あなた自身はなんでもない、普通の子よ。そんな風に自分を卑下しないで。あなたは、一番の被害者なんだから」
それでも沈む和泉に、吉行は頭を抱える。そして虎徹に視線を移すと、何も言わずとも虎徹は力強く頷いた。
「あーあー、とにかくお前帰れ。ここに居座られたら、イチャイチャしたくても出来ないだろ。謝りたいなら、明日うまい菓子でも持ってこい」
「ちょ……あんた、その怪我で無理したらぶん殴るからね! 本当……頼んだわよ」
吉行は虎徹の軽口に噛みつきながらも、心配そうな目を向ける。だが虎徹がもう一度頷けば、ひとまず立ち去った。
「まったく、毎回毎回嵐みたいな奴だな、あいつは。いきなり濃い顔見て疲れただろ? とにかく、中に入るか」
虎徹が自宅に入ってすぐ、壁掛け時計の音が六時を告げる。騒がしい日も夜が来れば静寂に戻る。虎徹が無事に帰ってきたのは、古びて隙間風の吹き荒ぶ、変わらぬ我が家だった。