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女は抱かれて刀になる
第6章 明日も、あさっても
 
「怖い事言うなよ、あの人怒らせたら首飛ぶぞ、多分。妙に気に入られるのも、逆に怖いけどな……何の準備もなく平気な顔で、札束懐から出せるんだぞ。なんであんな大金持ち歩いてるんだ、あの人」

「そういえば虎徹、先生って呼ばれてたね。ねえ、虎徹って実はとんでもなく偉い刀匠だったの?」

「そんな訳ないだろ、俺なんかペーペーのガキだぞ。ただ、師匠は偉い人でな。ご隠居さんは師匠のファンなんだろ」

 虎徹は浴室のドアを片手で開けると、和泉を下ろす。だがドアを閉める前に、和泉が虎徹の手を取って制した。

「でも、虎徹が唯一の弟子とか言ってなかった?」

「師匠はとんでもなく人嫌いのひねくれ者でさ、弟子はめったに取らないんだよ。たまに出来ても、逃げられるし。俺はしつこく弟子入りを迫って、しつこく続けたから、弟子って呼ばれてるだけだ」

「そんなにしつこかったの?」

「面と向かって、お前が日本一苦手だって言われるくらいにはな」

 すると和泉は渋い顔をして、ドアの外を指差す。

「そんなに鍛冶が好きなら、なおさら腕は大事にしなきゃ駄目じゃん! 無茶するの禁止、出てって!」
 
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