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女は抱かれて刀になる
第6章 明日も、あさっても
「……分かった、これはこっちで引き取る。じゃあ、もう二度と会わない事を願ってるぜ」
虎徹は溜め息を漏らし、ダンボールを持ち上げた。が、思った以上の重さにふらついてしまう。すると菊が嫌みな笑みを浮かべ、玄関の扉を開いた。
「そうそう、和泉はああ見えて読書が好きな子でして。その中身は全て本です。洋服や日用品の類は、後日宅配便にて送らせていただきます」
「じゃあ本も宅配便で送れよ! 嫌がらせか!」
「嫌がらせなんてとんでもない。あんな山奥の辺鄙な家では、和泉も退屈してしまうでしょう? 本だけでも早く手元に届けば、楽しみの一つもない時間に潤いが出ると考えた上での判断です」
口では正論をかざすが、にやけた顔を見れば本音は明らかである。虎徹は舌打ちして玄関をくぐるが、一度足を止めた。
「そうだ、お前に聞きたい事があったんだ」
振り返った虎徹の目は厳しく、菊も口を結ぶ。どこか生温かった空気は、一転して張り詰めた。
「和泉は、自分の父親が事故で死んだって話したが……本当は、和泉を自分のものにするため、お前が殺したんじゃないのか?」