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女は抱かれて刀になる
第6章 明日も、あさっても
虎徹は和泉の頭を撫でると、封筒を開く。中には筆で書かれた、達筆の便箋が入っていた。
『和泉へ
むさ苦しく汚い環境で、さぞ退屈な毎日を送っている事でしょう。この本は、そんな時間を紛らわせると共に、あなたの見識を広めてくれるはずです。
そして世界を知れば、そんな男よりも素敵な男性が沢山存在すると分かるでしょう。彼に失望した時、あなたの帰る場所は僕の元だと、決して忘れてはいけませんよ』
虎徹が玄関先に腰掛けて読み始めれば、和泉は背中にのしかかり共に文字を追う。そして大きな溜め息を吐くと、虎徹の肩に顔を埋めた。
「ホント、性格悪いね」
「全くだな。和泉、この手紙どうする? 燃やすか、それとも埋めるか?」
和泉は顔を上げると、虎徹から手紙を奪う。
「ううん、ちゃんと取っとく。菊さんにお世話になったのは、確かだから」
「そうか。和泉がそうしたいなら、そうするのが一番だ」
「本も読んでいい? 退屈なんてしてないけど、見識を広める、ってのは大事だと思うし」
「じゃあ、新しい本棚買わないとな。一緒に選んでくれるか?」
「もちろん。虎徹が一緒じゃなきゃ、つまんないもん」