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女は抱かれて刀になる
第1章 始まりは金曜日
とはいえ、貧乏刀匠である虎徹は最新の立派な車など持っていない。それは和泉からすれば、自分より年上の車であった。
「すごーい、ねぇこのハンドル何? 回しても爆発しないよね?」
「それは窓開ける手回しのハンドルな。自爆装置のついた車なんて、おっかなくて誰も乗らねぇよ」
「あ、ホントだ面白い! 手で窓開けるなんて新しいね」
「いや、古いんだけどな」
和泉は窓を開け、夕日に染まる景色を眺める。対向車とすれ違うのがやっとの細い道だが、すれ違う車も後続車もない。決して静かではないエンジン音は、逆光で黒く染まる林に消えていった。
「……バージンロードって、こんな感じなのかな」
「んな訳ないだろ。バージンロードってのは、なんかこう……キラキラして、神聖な空気で、身を洗われるような光が差すような――」
「虎徹って意外に乙女なんだね。かーわいい」
和泉はいつの間にか虎徹を覗き込み、にやにやと笑っている。虎徹は肘で和泉を小突くと、咳払いした。
「大人をからかうな」
「からかってないもん、遊んでるだけだもん」