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女は抱かれて刀になる
第1章 始まりは金曜日
まもなく着いた次の駅で電車を下りると、少女は身を離しお辞儀する。
「おじさん、ありがとー。助かったよ」
「ああ、お構いなく。気を付けなよ、悪いヤツは世の中山ほどいるからな」
流れで電車を下りたが、本来虎徹が向かっていたのはこの駅ではない。少女に軽く返事すると、ひとまずぐるりとホームを見渡した。
「ねぇ、おじさん」
すると少女が、虎徹の作務衣を掴み顔を見上げる。大人しく柔らかいようで、虎徹を芯から舐め回すような視線。虎徹は少女相手にうろたえる心を咳払いでごまかし、続きの言葉を待った。
しかし装った平静も、次の瞬間隠しきれない動揺へ変わる。
「ボクと恋人になって、エッチしよ」
先程まで痴漢に怯えて震えていたとは思えない、その言葉。いくら痴漢から助けてくれた相手とはいえ、虎徹は初対面で、少女より一回りは年上の男だ。その上身なりもあまり良くなく、無精髭も生やしたまま。どう考えても虎徹は、少女が一目惚れをするような美男子ではない。血が引き、硬直してしまう虎徹を尻目に、少女は柔らかで冷たい笑みを浮かべていた。