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女は抱かれて刀になる
第1章 始まりは金曜日
「すきま風、寒いんだけど」
ひびの入った土壁を眺めながら、少女は呟いた。そこから流れてくるのかは定かでないが、広さだけがとりえの古い日本家屋は、歩けば床が軋み畳は毛羽立っていた。
大分暖かくなってきた春先の朝とはいえ、一糸纏わぬ姿でいれば寒い。少女は贅肉も筋肉もない華奢な体を縮こめると、煎餅布団に寝転んだ。
「文句を言うなら、貧乏なおじさんを引っ掛けた自分に言え。ああそうだ、ホテルがいいとか、金の掛かる文句は言うなよ」
「言わないよ。普通っぽくなくて、こっちの方がいい」
少女の上に同じく裸体で覆い被さると、この汚い家の主、虎徹は色のある含み笑いを浮かべる。そして少女の頬に触れると、今さらな疑問を口にした。
「ところで嬢ちゃん、名前は? 俺は近藤虎徹、刀匠だ」
「とうしょう?」
「日本刀作ってる鍛冶屋さんだよ、奥に行けば、しっかり鍛冶場もあるぞ」
すると少女は、うろたえ怯えた目を向ける。虎徹が首を傾げると、少女はか細い声で虎徹に尋ねた。
「じゃあ虎徹は……ヤクザの仲間なの?」
「ヤクザ? なんで」
「だって、日本刀ってヤクザの武器じゃん」