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女は抱かれて刀になる
第2章 淫らで穏やかな土曜日
「なら話す事は何もないな。今はあいつに付いててやりたいから、俺は行くぞ」
「ちょっと待って。アタシが言いたいのは、性癖についてじゃないの」
吉行は顎に手を当て、レジに並ぶ和泉を観察する。黒髪の少女など世の中にはいくらでもいるが、吉行は何か引っかかるものを抱いたのだ。
「アタシ、あの子をどこかで見た気がする」
「この近辺に住んでるなら、どこかで顔を見ても不思議じゃないだろ」
「そういう見た、じゃないのよ。記憶に残るって事は、人と違う何かしらがあるって事よ? でも思い出せないわ、どこで見たのかしら」
考える吉行は、厳つく優秀な刑事そのものである。だが吉行が真剣に考えれば考えるほど、虎徹は脂汗を流した。
「確かお前、マル暴だよな? なんでそれで、和泉を見かけるんだよ」
「だから分からないのよ。だってあの子は、どう見ても普通の子だし。でも、だからこそ気をつけた方がいいかもね」
吉行が言いたかったのはそれだけだったらしく、眉をひそめ悩む虎徹の背を叩くと去っていく。だが虎徹の心には、深い靄が残った。
(あいつの抱えてる物は……俺が思っている以上に、根が深いのかもしれないな)