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女は抱かれて刀になる
第2章 淫らで穏やかな土曜日
「何のために俺が一緒にいると思ってるんだ? こういう時こそ、ワガママ言って俺をこき使うべきだろ」
多くを語らずとも、和泉は聡い。虎徹はそれを信じ、あえてそれ以上は語らなかった。和泉もそれ以上口を開かなかったが、車に戻るまで、繋がれた手は強く握られたままだった。
再び和泉が声を上げたのは、家へ戻り、食材を冷蔵庫に片付ける最中の事だった。
「ねぇ、虎徹」
和泉は冷蔵庫を閉めると、虎徹にいつになく真剣な目を向ける。虎徹が先を促すように頷けば、作務衣の裾を握りながら訊ねた。
「虎徹は……どうしてボクを抱いてくれたの?」
「随分唐突な質問だな。誘ったのはお前だろ?」
「それはそうだけど、ボク分かんないよ。だって虎徹は、そんな人じゃないじゃん。確かにスケベだけど、そんなバカな話に釣られる悪い人じゃないよ。なのに、どうして?」
虎徹が和泉の正体に疑問を持つように、和泉もまた虎徹の真意を測りかねていたのだろう。抱き合って通じているつもりでも、言葉にしなければ分からない事は山ほどある。今さらそれに気付いた虎徹は、苦笑いを浮かべた。