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女は抱かれて刀になる
第3章 夕日の沈む日曜日
「そっか……いいな、そういうの。ボクも、そんな風に話したいな」
和泉が見ているのは、遥か遠く。虎徹はそれを知って、知らぬ顔をする。
「話してみるか? なんなら今日、うちの親父とお袋に会いに行ってもいいぞ」
「え?」
「うちは男兄弟だけだったせいか、嫁が家に来ると喜ぶんだよ。お前意外に家庭的だから、気に入られると思うぞ」
虎徹の軽口に、和泉は顔を赤くして肩を小さくした。遠くを見ていた瞳は、焦りに揺れ、余裕を失っている。堪えきれずに笑い声を漏らせば、和泉は虎徹を睨み頬を膨らませた。
「そうやってボクをからかって、虎徹のバカ! 大体ボクは虎徹の嫁じゃないし、両親に挨拶とか……無理!」
「はいはい、俺が悪かった。じゃあ今日は予定通り、山に行くか」
太陽は、まだ顔を覗かせて間もない。しかしそれが沈めば、この不思議と穏やかな休日は終わってしまう。残された時間を、悲しみや憂いでなく優しさで埋めるように、虎徹は和泉の顔色を伺いながら進む。幸い昔話と軽口ですぐに影を忘れた和泉は、くるくると表情を変えながらドライブを楽しんでいた。