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女は抱かれて刀になる
第3章 夕日の沈む日曜日
そして細い山道を登った先には、山の管理に使われているプレハブ小屋がある。すぐそばの駐車場に車を止めると、虎徹は和泉の手を引き、小屋の脇にあるあぜ道を歩いた。
「そろそろ見えてくる頃だな、ほら」
目に見える前から、軽やかな川のせせらぎに混じり音は聞こえていた。が、目にすれば自然と緩んだ身が引き締まる。ごつごつした岩の間を流れる滝。上がるしぶきは空気を洗い流し、そこから伸びる川は泳ぐ魚も見えるくらいに澄んでいた。
「すごーい、滝! なんかスピリチュアルだね。ここ、虎徹の修業場所なの?」
「修業ってなんだよ、俺は刀匠であって、山伏じゃないぞ?」
「だって、虎徹っていかにも滝に打たれてそうだし。ねぇ、ちょっと打たれてきてよ」
「まだ水ん中に浸かれるほど暖かくないぞ、というか下手すりゃ死ぬぞ」
「えー? 残念」
和泉はふくれっ面でしゃがみ込むと、川に手を突っ込む。そしてすぐに引き上げると、虎徹に飛び付いた。
「うん、確かに冷たい。スイカ冷やしたら美味しそうだよ」
「いや、だから今は春だぞ」
「じゃあトマトとか」
「それも旬は夏だな」