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女は抱かれて刀になる
第3章 夕日の沈む日曜日
虎徹は頬を掻き、大きな体を縮こめる。が、肝心の和泉が反応しないので、照れくささを誤魔化すように首を後ろへ回した。
「お前、いつもみたいにボケるか突っ込むかしろよ! 俺が一人で馬鹿みたいだ……」
背中にしがみつく和泉の顔はよく見えないが、いつもと違う雰囲気は隠せない。虎徹は振り向き和泉を背中から剥がすと、顎を取り顔を上げた。
初めて出会った時は、触れる者を切り捨てそうなくらい鋭かった瞳。それは今困惑の波紋で揺れ、向けられる恋慕に潤む女のものだった。刃で覆う先にある、和泉の本質。曲がらない芯と柔軟な刀身。虎徹は、飛び散る火花を感じた気がした。
「こ、虎徹、なんで黙ってるの。なんで急にそんな事言うの!? ボクそんな事言われたの生まれて初めてだから、どうすればいいか分かんないよ」
和泉は、炎から出したばかりの刀のように、体中の熱を上げている。生まれたてのまっさらな体を鎮め強く出来るのは、刀をよく知る刀匠だけである。
「こんな時は……身を任せればいいさ」
口付ければ、再び甘い飴の味が広がる。虎徹は口の中に転がる飴を舌で掬い取ると、一気に噛み砕いた。