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女は抱かれて刀になる
第3章 夕日の沈む日曜日
面白みもなく並ぶ建物から覗く夕日は、世界を真っ赤に染める。しかし塗り替えられた世界も、夜が来れば色を失ってしまう。
「……お蕎麦が食べたい」
暮れなずむ赤の世界に響く、腹の虫。運転中の虎徹は顔こそ前を向いたままだが、確かに頷いた。
食事を終えて蕎麦屋から出た頃には、もう外は夜だった。燃える赤は身を潜め、頼りない星空が黒を支える。夜の風は、火照る体を冷やして過ぎていった。
「虎徹」
和泉は車に乗ると、エンジンを掛けようとする虎徹の手を止める。そして首を傾げる虎徹に、縋るような目を向けた。
「虎徹……ボクをお嫁さんにしてよ。そしたら毎日一緒にいられるし、楽しいよ」
「お前、いきなり何言って」
「家事は出来るし、節約料理だってたくさん覚えるよ! エッチな事したいなら、裸で外だって歩くから……虎徹の側にいさせてよ」
和泉はうつむき、自身の膝の上で拳を強く握りながら語る。虎徹はそんな和泉の頭を撫でながら、柔らかい口調で言葉を掛けた。
「確かに、お前が嫁さんに来たら、俺は毎日楽しいだろうな」
「だったら、一緒にいようよ」
「でも、お前はそれで本当に楽しく過ごせるか?」