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女は抱かれて刀になる
第4章 若紫
苛立つ虎徹を、吉行は冷静に宥めていく。
『仮にあの子が児童ポルノとかに参加させられていたら、被害届がなくても動けたかもしれない。けれど一文字は、あの子に一切後ろ暗い事はさせてないわ。従順で純真な、そんな子にしたかったんでしょうね』
手の打ちようがない、そう突きつけられた虎徹は、舌打ちし苛立ちを誤魔化した。吉行も虎徹の心境は理解しているのだろう、同じように溜め息を漏らし、話を続けた。
『てっちゃん、あんた相当やばいわよ。一文字 菊って、昔気質の豪快なヤクザじゃなくて、表向きは善良な振りをする一番嫌なタイプなの。執着してる女に手を出されたと知ったら、社会的に抹殺された後に命も奪われるかも』
「もう向こうは知ってる。そうか、そんな奴なら、なおさら和泉を助けてやらないとな」
『ちょっと、話聞いてたの!? あいつはやばいの!! 誰かが被害を訴えなきゃ、どうしようもない――』
「あいつはとっくに訴えてたんだよ! 誰も……俺だって、気付けなかっただけだ!!」
虎徹は怒鳴りつけ電話を切ると、家を飛び出し車に乗り込む。吉行から何度も着信があったが、出番が迫ったのか、しばらくするとそれも切れる。