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女は抱かれて刀になる
第4章 若紫
「なんでそこまで一文字が親父さんを尊敬してるんだ? 多少話をする機会があったにしても、普通そこまで尊敬なんてしないだろ。一文字も、親父さんの教え子か何かだったのか?」
虎徹の問いに、今まですらすら話していた和泉の口が止まる。マグカップを置くと、首を傾げた。
「――そういえば、なんでだろ。でも菊さんがお父さんの教え子、なんて話は聞いてないよ。そうだったら、どこかで聞いてると思うんだけど」
心当たりがないとしたら、虎徹に浮かぶ考えは一つ。父親を褒めて和泉を安心させ、取り込む策ではないかという疑いだった。
「まあ、分からない事を考えても答えは出ないな。それで、お前はどうしたんだ?」
「あ、うん。菊さんの援助を受けながら、普通に暮らしてたよ。けど、その頃からお母さんが、ボクに冷たくなったんだ。ううん、ボクなんていないみたいな扱いだった。だから学校の行事とかも、全部菊さんが来てくれてたし」
それは吉行が電話で話していた通り、内縁関係と言われても不思議ではない繋がりである。むしろ母親の態度を考慮すれば、菊の方がよほど親らしいと言えるだろう。