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女は抱かれて刀になる
第4章 若紫
「ボク、少しでもお母さんに構ってもらいたくて、家事とか、勉強とか、頑張ったんだ。全部無駄だったけど」
「無駄なんかじゃないだろ。現にそのおかげで、俺はお前に胃袋掴まれたぞ。勉強だって、出来るに越した事はない」
「そっか、じゃあお母さんに感謝しないとね」
和泉はコーヒーを一気に半分ほど飲み、喉を潤す。そして広がる苦味を噛み締めながら、再び口を開いた。
「高校生になって、ボク思ったんだ。バイトでもして家にお金入れれば、お母さん喜ぶかなって。それですぐバイト探したんだけど……」
「母親がもっと金よこせって要求したのか?」
「ううん。どこに面接行ってもね、ボク落とされたんだ。しかも、やんわりだけど、二度と来るなって釘刺されるし。あんまり受からないから、つい菊さんに愚痴っちゃったんだよ。それが、虎徹と会った前の日の夜の事」
すると和泉の体が、僅かに震え始める。虎徹はそんな和泉の背を慈しむように撫で、首を横に振った。
「無理しなくていいぞ、和泉」
「ううん、ちゃんと聞いてほしい。ボクがどんな理由で、家を飛び出したのか――」