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女は抱かれて刀になる
第4章 若紫
「ねぇ、菊さんもヒドいと思うよね!?」
ベッドの上で胡座を掻いた和泉は、特にめかしこむでもなく、すっかり気の抜いた様子で頬を膨らませる。苛立ちを隠せない和泉を見て溜め息を漏らした菊は、テーブルに肘をつき肩をすくめた。
「仕方ないでしょう、世間から見たあなたは、親子揃ってヤクザの女なんですから」
「――え?」
日常会話のように答えたが、和泉はその言葉を流しは出来なかった。兄として、父として慕ってきた者から出た、下品な単語。しかし和泉が固まり口を結んでも、菊は淡々と語り続けていた。
「まあ親子揃って、は間違いですけどね。僕は援助こそしても、あの女と関係を持った事はありません。傍目から見れば、そう思われても仕方ありませんが」
それはまるで、母は違うが和泉はそうだ、とでも言うような言葉である。和泉は胡座を止めて膝を抱えると、小さく首を振った。
「なに……言ってるの。ボク、菊さんの女じゃないよ。菊さん、いっぱい女の人、はべらせてるじゃん」
「和泉も、もう高校生ですね。世間から妙な入れ知恵をされる前に、正しい己の価値を教えましょう」