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Dolls…
第8章 古傷
━━━━ドクンッ
ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ…。
「あ、あの…、これは、その…」
早く言い訳しなくちゃ…。
椎葉さんの親戚か妹か、身内だってことに…。
しかし、混乱した頭で言い訳を考えるか上手く説明出来ない。
私があたふたしてる間に奈々さんの目は壁際に移動していた。
奈々さんの目線の先にあるのは、壁に着いた私の手。
袖が少し捲れたその手首に着いているのは
明らかに、何かに縛られた痣。
あ━━━━━…っ
慌ててその痣を隠そうとしたが…
━━━━━━グイッ…「痛…っ」
奈々さんが、私の左腕をグイッと引っ張った。
咄嗟のことで力が入らなくて、私の腕は奈々さんの方に引き寄せられてしまった。
それは、さっきの奈々さんから想像出来ないぐらいの力だった。
「痛…、奈々さん…っ」
私の手首に着いた痣をマジマジと見つめる奈々さん。
こんなところに着いた痣なんて、一目で怪しいとわかってしまう。
今更、妹だとか親戚だとかそんな言い訳は通用しない。
「こ、これは…、違うんです…っ」
「………………。」
奈々さんはただ黙って私の手首の痣を見つめてる。
その力は尋常じゃないぐらいに強い。
どうしよう…。
絶対怪しまれてる…。
例えどんな事情があって別れたとしてもと奈々さんは椎葉さんの事が好きで
私は…、椎葉さんとは何の関係もないただの人形のモデルだ。
こんな痣、奈々さんが見たらきっと怪しむ。
「な、奈々さ…」
すると、奈々さんは
傷ついた顔を見せる訳でもなく、私を問いただす事もなく
私の腕の傷を自分の口許へと引き寄せてきた。
「………っ!」
まるで、愛しいものに口づけをするかのように。