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Dolls…
第8章 古傷
ドアを叩いたり、ドアノブをガチャガチャと回す音が聞こえる。



私は…、椎葉さんの事なんか…っ!



「椿、聞いてるのかっ!」



椎葉さんの事なんか…っ!



━━━━━━っ!!






「私の事も捨てるんでしょっ!だったらさっさと捨てて下さいっ!!」

「……なっ」








こんな気持ちになるぐらいなら、捨てられた方がマシだ。

説明のつかないこんな辛い気持ちになるぐらいなら、さっさとこんな屋敷から追い出された方がマシだ。

椎葉さんの声が聞こえないように、耳を塞ぎその場に踞った。

これ以上、私の名前を呼ぶ椎葉さんの声を聞いていたくなかった。





胸が、痛い…。

胸が引き裂かれたみたいに痛い…。




何なのよ、この屋敷は…。

この屋敷に来てから私は可笑しくなった。

訳のわからない胸の痛みに襲われて、人形みたいな主人と人形みたいな女性に目の敵にされて

この屋敷に来てから、私の運命の歯車は狂ってしまった。

こんな屋敷に忍び込んだりしなければ…。





自分の運命を呪いながら、伏せていた顔を上げると、そこは…





「ひっ…」





椎葉さんから逃げて辿り着いたこの部屋。

窓から差し込む日の光に照らされたその室内には


木彫りの顔や腕や足が転がっていた。

「あ…っ」

思わず立ち上がりドアに背中をくっつけるように後退りをしたが…



勉強机があって、椅子があって、スタンドグラスがあって

彫刻刀やナイフや、不気味な刃物が並んでいる。


一瞬、恐怖し後退りしてしまったが、この部屋は


「あ…、人形…」


よく見たら、そこら辺に転がってるのは木彫りの人形のパーツ。

ここは…、椎葉さんの作業部屋か。









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