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Dolls…
第8章 古傷





━━━━━ドンッ!!

「ひっ…」



壁に追いやった私を通せんぼするかのように、自分の腕の中の檻に閉じ込めてしまった。

これじゃ逃げられない…。

いきなり壁を叩かれてその衝撃に驚いてしまった。

しかし、逃げられないこの状況の方が今の私には恐い。



「いい加減にしろよ。さっきからくだらねぇ事ばっかり言いやがって」

「く、くだらないって…」



顔のすぐそばに、椎葉さんの気配を感じる。

この体勢、椎葉さんの顔が間近に来てる。

今は…、椎葉さんの顔が見れないって言うのに…。

椎葉さんの顔に迫られて、緊張のあまり身動きが取れなくなってしまった。


どうしよう…

意識すれば、椎葉さんの息づかいも聞こえて来そうな距離だ。



「いい度胸だ。俺を愛してないなら一向に構わない」

「だったら…」

「ただ、これだけは覚えておけ。どう足掻こうがどんなに逃げようがお前は俺のもので俺からは逃げられないって事」

「…………っ」

「どれだけ逃げても、こうして何度も捕まえてやる」

「━━━━━っ!!」





そこまで言われて、私は椎葉さんの言葉を思い出した。




ここに来て最初の頃、椎葉さんにムリヤリ抱かれた時、椎葉さんは私に言った。

私の絶望に満ちた瞳が見たいのだと。

生気のない死んだような瞳が見たいのだと。

だから椎葉さんは私を選んだんだ。

椎葉さんを愛して、どんな事でも受け入れてくれそうな奈々さんじゃなく

椎葉さんの事を憎み、恨んでいる私を…。



どうして、こんな簡単な理由に気づけなかったんだろう。



もしそうだとしたら、奈々さんが振られた理由もわかる。

だけど…

そんな理由で奈々さんを振ったの…?








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