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Dolls…
第9章 腕の中の宝物
「…………っ!!」


椎葉さんの顔が私の目の前にある。

それこそ、私の額に椎葉さんの前髪が触れるぐらいの距離。

払い除けようにも両手は椎葉さんに押さえつけられてる。


椎葉さんの硝子玉のようなブラウンの瞳が私の目を一点に見つめていて

その瞳に見つめられただけで、目眩にも似た感覚に襲われてしまう。


「ど、どいて…っ」

「だったらちゃんと言ってみろ。目を反らし続ける理由を…」


恥ずかしさのあまり固く閉じた瞳をうっすらと開けると、椎葉さんはまるで何かを企む子供のような顔で私を見つめている。


……もしかして

椎葉さん、わざと私を試してる…?

混乱する私を更に困らせようとしてこんな事を…?

私の気まずさや恥ずかしさ全てを見抜いて、わざと私を追い詰めてるんじゃ…?


椎葉さんの瞳を見てるとそんな事まで邪推してしまう。

全てを見透かし試されてる、そう思うと何だか腹立たしいが


動けないまま椎葉さんの瞳に見つめられてるこの状況。

…抗えない。


「どうした?」


何なの、この人…。

人の事を混乱させたり、翻弄したり。

私は椎葉さんの掌で転がされてるだけだ。

…誰が答えるもんか。

それに━━━━━


「な、何でもありませんっ!どいてください!お、重いですっ!」



それに、答えたくても答えられない。

上手く説明出来ない、自分でもわからないこの気持ちを言葉にするなんて出来ない。

ただ、今言えるのは…

心臓が高鳴って、体中の血液が顔に集結して沸騰してるみたいで、そのせいで少し目眩を起こしてるって事。

こんなに近い距離じゃ高鳴る心臓の鼓動も椎葉さんに聞こえてるかも知れない。


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