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Dolls…
第9章 腕の中の宝物
「私の事、からかってるんですか…?」

全てを見透かした上で私を弄んでるとしたら、相当の悪人だ、この人。



この人を愛してると嘘をつけばここから逃げられるかも知れない。

椎葉さんが必要としてるのは、椎葉さんを恨んでる私自身。

私が自由になるにはその方法しかないと思ったけど…。



「からかってなんかない。知りたいだけだ」

「あ……っ」



椎葉さんの前髪が私の額にふわりと降り立つ。

と、同時に椎葉さんの睫毛の気配を感じるくらいまで椎葉さん顔が私のすぐ側にまで近づいた。

思わず目を閉じてしまったが…

ギリギリ、唇が触れるか触れないかの距離…


「言ってみろ」

「……………っ」


あと数ミリの位置で椎葉さんの唇が動く。

椎葉さんの吐息が私の唇に触れてる。


な、何でこの距離で寸止めなの…っ?

ちょっとでも動いたら唇が触れてしまう…。

う、動けない…っ。




ドクンッ、ドクンッ


「あ…、や…」

「触れてもいないのに、そんな声出すな」

確かに、私の腕を掴んではいるが、その他はどこにも触れてない。

なのに体が震える。


ドクンッ、ドクンッ

「や、やめてっ!からかうのもいい加減に━━━」

椎葉さんの気配から逃げたくて顔を横に反らした。

これ以上この距離で話されたら頭が沸騰して可笑しくなりそうだったから。

しかし、椎葉さんの気配は無くならない。


「だったら、お前もいい加減素直になれ」

「……んっ」

今度は耳に椎葉さんの息を感じた。

耳のすぐそばで話されて、話すたびに椎葉さんの吐息が耳に吹きかかる。

それが何だか、妙にくすぐったい。



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