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Dolls…
第10章 美しき獣
━━━っ!
「きゃあぁっ!!」
大きな音と共に鉛色の空が一瞬明るく光った。
やだ…、怖い…っ。
田舎で感じた嵐とは全然違う。
見知らぬ土地で見知らぬ屋敷の部屋に1人でいる事がこんなに怖いなんて…。
ただでさえ人形だらけで不気味なのに…。
「…………っ」
その時、私の中の恐怖が限界に達したとき、私の頭の中に浮かんだのは信じられない人物だった。
椎葉さん……。
大嫌い。
だけど、今はいろんな意味で顔を合わすことすら出来ない。
あの人に頼るなんて死んでもお断りだったのに。
気まずくても何でもいいから、椎葉さんにそばにいて欲しいと願っていた。
強がって、椎葉さんを追い返したはずなのに
今はただ、椎葉さんのそばにいたかった。
それほどまでに私の頭の中と心の中には椎葉さんがいた。
自分でも信じられないくらい━━━━。
布団にくるまりながら思った。
椎葉さんはこの嵐の中で人形を作ってるのかな?
あの作業部屋で、あの写真を眺めながら…。
だけど、自分から椎葉さんの元へ行くのは気が進まなかった。
何より、あの人形のような瞳で見つめられたら自分が自分でなくなるような気がしてた。
ここに来てから何度も感じたあの堕ちるような嫌な気持ち。
あんな気持ちになるぐらいなら、この部屋で大人しくこの嵐が過ぎ去るのを待つべきかも知れない。
さっきはいきなりの雷鳴で驚いただけで、きっと直に慣れるし嵐だってすぐに通りすぎてくれる。
━━━━ドォォォンッ!!
「うっ…」
割れるような音が響くたびに恐怖で体が萎縮する。