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Dolls…
第10章 美しき獣
嫌…っ!
誰か、助けてっ!
助けてっ!!
心の中でそう叫びながらその人影から逃げた。
しかし、いくら逃げてもその人影は追いかけてくる。
それも、物凄い早さだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、は…っ」
━━━━━っ!!
人影の気配と、荒い息遣いが背後から…、もうすぐ真後ろから聞こえてくる。
あの人影がすぐ真後ろにいるのがわかった。
誰か…、助けて…っ
誰か━━━━━
椎葉さんっ!!
そして、その人影の手が私の腕に伸びてきて
私の腕をグッと掴んだ。
━━━━━━もう、ダメだ…。
「嫌ぁぁぁっ!!椎葉さ━━━━━━っ」
「おい!椿っ!!」
……………………え?
"椿"って…?
今、確かに自分の名前を呼ぶ男性の声が聞こえた。
それは、何処からともなくとかじゃなく真後ろから聞こえた。
それに、この声って…
覚悟を決めたかのように強く閉じた瞳を開き、ゆっくり後ろを振り返った。
稲光で照らされたその人物は、黒いパーカーのフードを目深にかぶり全身びしょ濡れの怪しげな人物だったが
不思議とさっきまでの恐怖はなくなっていた。
触れれると言うことは幽霊ではないと言うことだし、それに…
今、私の名前を呼んだ声には聞き覚えがあった。
椎葉さんの声ではない別の男性の声。
この声って…
いや、だけど…
こんなところにいるはずがない…っ。
こんな山奥の、誰も寄り付かない屋敷に…っ。
私がここに監禁されてる事は誰も知らないはずだ。
だけど…っ!