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Dolls…
第11章 人形の瞳は…
ここに来たとき、その辺の木に立て掛けておいた私の自転車。

自転車の存在すら忘れてた。


この嵐の中を、わざわざ私を探す為に山を昇って

しかも、こんな不気味な屋敷に忍び込んで来たの?


「私を探しに、この屋敷に…?」

「…まぁな。玄関のドアには鍵がかかってたから仕方なく窓から」




…それじゃちょっとした不法侵入だ。

だけど、窓の鍵を閉めていない椎葉さんも不注意すぎる。



さっきまでの恐怖が溶けていく。

それに変わるように、懐かしさや嬉しさや罪悪感が胸の中に広がって行き

鼻の奥がツンッと痛くなった。

瞳には今にも溢れ出しそうな程に涙が浮かんでいる。


そんな私の表情を見てシュウちゃんはギョッとしている。


「な…、ど、どどうしたんだよ…っ」


シュウちゃんは知らない。

知るはずがない。

私がここで何をされたか、どんな目にあったか。

悪魔のような人形師に捕まって、玩具みたいに弄ばれてるなんて。

そんな人形師に捕まって監禁されてる。

外部との接触を断たれ、梓やシュウちゃんや両親にまで心配をかけてる。

だけど、ここ最近、そんな悪魔のような人形師に弄ばれ触れられるたびに私の中の常識や理性が少しずつ崩壊している。



「別に…、お前が無事ならそれでいいんだって!俺も東京観光がしたかっただけだし、有休だってだいぶ貯まってたから使わねぇと勿体ねぇし、この屋敷だってお化け屋敷感覚で忍び込んだだけだし」

今にも泣き出しそうな私に近づき私の頭を優しく撫でるシュウちゃん。

いつもなら、こんな子供扱いに腹を立てるはずなのに

今は腹など立たない。

むしろ、浮世離れした今の状態から、現実へと引き戻してくれるシュウちゃんの手の暖かさ。

その温もりが嬉しかった。

まるで、生き返るようだった。


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