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Dolls…
第18章 パンドラの箱
「椎葉さん…っ」

相変わらず、幽霊みたいに物音を立てず気配も感じさせずに部屋に侵入して来る。

最近じゃそんな出来事にも慣れて来ていたが、このパターンは初めてだ。

「椎葉さん、どいて…」

しかし、私の上に覆い被さった椎葉さんは俯せの状態の私の腕を押さえ身動き1つ取れなくしてしまった。

頭も重みで押さえられてるせいで、椎葉さんの方を振り返れない。

椎葉さんの声しか聞こえない。

「尚人にいろいろ聞いたよ。尚人と何を話してた?俺がいない隙に2人で…」

「な、何も…。ただ、奈々さんの事を…っ」

私の後ろから耳元に聞こえる椎葉さんの声。

その声は怒ってる訳ではなさそうだけど、顔が見えず表情が見えないだけに怖い。


だけど、嘘は付いていない。

安藤さんから本当に奈々さんの話しか聞いていない。

厳密に言えば、聞かされてない。


「本当にそれだけか?ん?」

「……っ!」


椎葉さんの吐息が耳に当たってくすぐったい。


「ほ、本当にそれだけですっ!」

だって、安藤さんは奈々さんの事しか答えてくれなかった。

椎葉さんのお母さんの事までは教えてくれなかった。

椎葉さんの口から聞いた方がいいと言って…。


「……まぁ、いい。お前がどう思ったかは知らないが、それが真実だ。俺は奈々には何の興味もなかった。素材は良かったから人形のモデルにはなってもらってたが…」

…本当に、椎葉さんと奈々さんの間には何もなかったんだ。

椎葉さんは本当に、奈々さんには触れてないんだ。

「そ、ですか…」

「どうした?安心したか?」

「な…っ!」


椎葉さんが奈々さんを抱いてないとわかって

私は確かにホッとした。

図星だ。



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