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第1章 出会い

東京に出て来て、一人暮らしをしてみて、わかったことがいっぱいある。

一人暮らしなのだから当然、ご飯は自分で作らなきゃいけない。

掃除も洗濯も、全て自分でやらなきゃいけない。

それがどんなに大変なことか…、母親の苦労や大変さがわかった。

生きてく為にお金を稼ぐ事…、父親の偉大さが身に染みてわかった。

親元を離れてみないと気づけない事ばかりだ。

「梓は一人暮らしとか考えてないの？」

「私は当分実家暮らしでいいよ。今の職場だって家から近いってだけで決めたようなもんだし」

「あはは～、それにしても東京の夕焼けって本当に真っ赤ね。まるで炎に包まれてるみたい」


ふっと空を見上げるとオレンジと赤が交じり合い、溶け合って滲んでいくような空模様だ。

そこに、今にも消え入りそうな微かな白い雲。

まるで、大きなキャンバスに絵の具を垂らしただけの絵みたい。


田舎じゃ、あっという間に日が落ちて、こんなふうに夕焼けの空を見上げるなんて事はしなかった。


「美大志望者の言い回しって独特だね。炎に包まれてる、なんて。私はもう見飽きたわ、こんな夕焼け」

「梓は感受性が乏しいんじゃない？あはは～」

「ほっといてよね！あはは！」


時刻は17:30。

この真っ赤な街中を私達を含めいろんな人達が帰路に着いてる。

時間的にもう夕飯時。

この都会で生きてる人達はみんな、それぞれの家族の元へ帰るんだ。

真っ赤な太陽に背中を焼かれながら家路を急いでる。