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Dolls…
第23章 危険な香り







…………。


ここに来てから安藤さんは私の為にいろんな事をしてくれた。

椎葉さんの屋敷から連れ出してくれたのだって私が傷つかないようにと思ってしてくれたこと。

洋服や靴を買ってくれたり…、やってることは椎葉さんと変わらないけど、私の好みや趣味趣向を考えてくれてる。

それに何より椎葉さんと違って価値観もよく似てる。

椎葉さんの屋敷で作ってくれたみたいに、お好み焼きが好きだったりインスタントコーヒーが好きだったり…。

田舎育ちの私と都会育ちの安藤さんを比べたら失礼かも知れないけど…。



安藤さんは椎葉さんと違って私と同じ世界の人。

私の価値観とよく似てる、普通の世界の人。

安藤さんとなら、私…。

このまま、この胸の痛みを引きずり続けるなんて嫌だ。

このまま椎葉さんを忘れられないまま苦しむのはもう嫌だ。


痛いのも辛いのももう…、もう嫌だ…っ。



ガムテープを引きちぎり箱の蓋を開けると、真っ黒なパンプスと紺色のスニーカーが姿を表せた。

「一応お出掛け靴と動きやすいスニーカー。他に欲しいものがあったら言ってね」

「………………。」

「椿ちゃん?」




もし、私が安藤さんの手を取ったら安藤さんは助けてくれるのかな?

この辛くて苦しい胸の痛みを全て取り除いてくれるのかな?

このまま全てを安藤さんに委ねてしまえば…、楽に…。



「椿ちゃん?」








楽に…っ







━━━━━━ハッ…









「どうしたの?ボーッとして」

「あ、いえ…。ありがとうございます…」




今、私…

何を考えてた…?









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