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Dolls…
第23章 危険な香り
「は、離してっ!私は奈々さんじゃないっ!!」

ハッと我に返った私は安藤さんを振り払おうと今はここぞとばかりに安藤さんの体の下で必死に暴れた。

しかし、男性の力には勝てないことぐらい椎葉さんの件で嫌と言うほど経験してる。

抵抗しても無駄だ、と。

「私は奈々さんじゃありませんっ!私と奈々さんを重ねないでっ!!」



思えばここに来てから私は一歩も外へ出してもらってない。

買い物は全部安藤さんがしてくれたし、私の服や靴は全てネット購入。

私がここを出て行くと言った時の安藤さんの尋常じゃない怒りよう。

あの時は椎葉さんと離れたショックの方が大きくて深く考えなかったがよくよく考えたら可笑しなことばかり。


安藤さんは私と奈々さんを重ねて、去っていく奈々さんを引き止められなかった悔しさを私で晴らそうとしてるんだ。

だから、どこにも行けないように私をここに止めておこうとしたのだ。



…これじゃ、椎葉さんの屋敷と変わらない。

監禁状態だ。




「いやっ!!いやあぁぁぁぁっ!!」

「いくら叫んでも無駄だよ。ここの防音設備は完璧だし、住人もほとんどいないから」

「やだっ…、や…っ」

「最初は椿ちゃんと奈々を重ねるつもりはなかったんだ。だけど、あの時と何もかもが一緒なんだ。何もかもがダブッて重なるんだ…」






私は…、私は奈々さんじゃないっ!

奈々さんは今頃海の向こう。

近場の私で無念を晴らそうなんて間違ってる。




「や、やめてっ!退いて下さいっ!!」

「もう離さない…っ、愛してる…」




━━━━━━━━っ!!




頭を包み込むように腕で押さえ付けられ、頭部が動けなくなった私唇に熱い何かが重なった。



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