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Dolls…
第23章 危険な香り
「やっと…、やっと俺だけのものに…」
━━━━━━ビリッ
安藤さんが貸してくれたTシャツは脆くて、強引に引っ張っただけで胸元の生地が音を立てて裂けた。
女性用の下着などまだ購入してなく包み隠すもの等ない胸元が露になってしまう。
「━━━━━あ」
突然の事で…、悲鳴を上げる暇もなく何かを諦めたかのように硬直してしまった。
椎葉さんにしか見せたことのない胸元をこんな形で他の人に見られてしまうなんて…。
「椿ちゃん…」
もうダメだ…。
このままじゃ私、本当に…
本当に安藤さんに…?
安藤さんの目は何かに取り憑かれたかのような瞳で私の体をマジマジと見つめてる。
椎葉さん以外の人に見られてると思うだけで恥ずかしいのにそんなに見つめないで。
「お、お願…、やめて…っ」
怖くて怖くて声が震える。
涙すら流れないほどに心も体も凍てついてる。
そして、安藤さんの腕が私の首筋を伝って胸元に降りてくる。
椎葉さん以外の人に触れられてると思うだけで鳥肌が立つ。
…気持ち悪い。
━━━でも、いっそこのまま覚悟を決めて安藤さんのものになってしまった方が楽なのかも知れない。
奈々さんの変わりでも別にいいかも。
椎葉さんの屋敷にいた時だって人形のモデルとしてだったし、安藤さんも椎葉さんも本当の生身の私なんて見てないんだから。
私はいつだって誰かの変わり。
何かの代理品だ。
覚悟を決めたかのように怖がりながらも静かに目を閉じた。