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Dolls…
第23章 危険な香り
ここから逃げる。
逃げて椎葉さんの元に帰りたい。
人形のままでも、モデルのままでもいいから椎葉さんのそばにいたい。
「椎葉さ━━━━━━」
室内のモニターのスピーカーに向かって椎葉さんに助けを求めようとしたが
━━━━━━━「んぐっ……!」
スピーカーに叫ぼうとする私の後ろから安藤さんの手が伸びてきた。
私の片手で口を塞ぎ、もう片方の手は私の首を絞めるように首元に絡み付いてきた。
然程力は加わってないので苦しくはないが、それでも身動きがとれなくなり声も塞がれてしまった。
そして、ふっと見ると目の前のモニターには椎葉さんの姿が映っていた。
あれほど会いたくて仕方なかった愛しい人…。
だけど、この体勢じゃ声を上げるどころか身動き1つ取れやしない。
これじゃ、椎葉さんに助けを求める事も出来ない。
本当は今すぐにだって椎葉さんの胸に飛び込みたいのに。
「んっ、んぐっ」
両手で必死に絡み付いてる手をほどこうとするが安藤さんの腕はビクともしない。
『尚人お前、話が違わねぇか?』
…話?
椎葉さんと安藤さんの間に何か話があったの…?
モニター越しの椎葉さんの表情はいつになく怒っている。
話って一体…?
『確かにこれ以上、俺は椿に何もしてやれねぇから自由にしてやったよ…。だけど、それは椿を元のアパートに返してやるって意味だ。お前と暮らしてるって言うんなら椿は連れて帰る!!』
…………椎葉さん。
安藤さんの腕の中で私は椎葉さんの言葉をただただ聞き入っていた。
椎葉さんの言葉1つ1つが私の胸に深く突き刺さって来るようだった。