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Dolls…
第23章 危険な香り


椎葉さんは私を安藤さんに渡した訳じゃなかった…。

私と安藤さんが暮らせばいいなんて思ってもなかった。

私を元のアパートに返すつもりだったんだ。



それを安藤さんが…、嘘をつき私を騙してここに止まらせてたんだ。


椎葉さんの言葉が嬉しくて、瞳には涙が浮かんでいた。

何とかしてこの腕から逃げなきゃ。

だけど、さっきからどんなに力を入れてもビクともしないし動きもしない。

……声すら出せない。


目の前のモニター越の椎葉さんを祈るようにして必死に見つめた。



椎葉さん、私はここにいます…。

助けて…。

私は椎葉さんの元に戻りたい…。

椎葉さんのそばに帰りたい…。




心の中で何度も呟いたが━━━━━



「椿ちゃんなら、さっき帰ったよ」


モニターに向かって話す安藤さんの言葉に私の心は硝子のようにひび割れてしまう。


『か、帰った…?』

「確かに、さっきまで椿ちゃんはここにいたよ。だけどもう帰った。秋人の声を聞いて辛くなったんじゃないか?」



安藤さん、何を…。

この状態では椎葉さんに助けを求める事が出来ない。

それを良いことにこんな嘘まで付いて…っ


「んうっ!んっ!」

何とかして…、悲鳴でもいいから椎葉さんの声を届かせようとするが空気すら漏れないように圧迫された口元からは何の声も発せられない。

「アパートに1人じゃ寂しかったんだろうな。遊びに来てくれてたんだよ。まぁ、お前の声を聞いた途端に帰るぐらいなんだから相当怨まれてるんじゃね?」


嘘よっ!!

人をこんなところに閉じ込めて、外に一歩も出られないように監禁して

その上、私が椎葉さんを怨んでるなんて嘘つきもいいとこだ。






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