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Dolls…
第23章 危険な香り
椎葉さん、私は椎葉さんを怨んでなんかいません。

会えなくなって寂しかったのは本当だけど、怨んでなんか…。


そう今すぐ椎葉さんに伝えたいのに…。


絡み付く腕から逃げようとじたばたする私を押さえるように安藤さんの腕にも一層力が入る。

「ふっ、ん」

「つーか、そりゃそうだろうよ。散々弄んどいていきなり突き放されたら大抵の女は怨むに決まってんだろ。で、今度はこうやって押し掛けて来て…、中途半端にも程があるな」

『……っ』

「いい加減、椿ちゃんの事は忘れろよ。椿ちゃんには俺が付いててやるから、お前は男らしくすっぱり忘れろ。椿ちゃんに取っても迷惑だ」


安藤さんの言うことは筋が通ってる。

普通なら誰もが納得するような理論だ。

だけど、この人のやってることを思えば頷くに頷けない。

安藤さんのしてる事の方がよっぽど酷い。

安藤さんはただ、私を奈々さんの身代わりにしようとしてるだけじゃない。


「んっ、ん!」


椎葉さん……っ!










『はっ、それもそうか…』









モニター越の椎葉さんの表情が一変した。

それは、何かを諦めたような…、脱力したような表情だった。

まさか椎葉さん、今の話を信じたんじゃ…。









『ただ、椿の様子を知りたくて電話しただけだ。元気にやってるならそれでいい。夜遅くに悪かった…』



━━━━━━っ!!




その言葉を最後にモニター越の椎葉さんはこちらに背中を向け歩き出して行く。








う、嘘……。

椎葉さん…、嘘でしょ…?

こんな…、こんな終わり方って…、椎葉さん…っ。

待って…、お願い待って…。


こんな…、去り行く椎葉さんの背中を引き止められないなんて…

何度繰り返せばいいの…?






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