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第4章 瞳の奥

男の目が、私を見てる。


髪や、口許や、体…、至るところに視線が刺さる。

じろじろと、隈無く私の全てを見てる。

これじゃ落ち着いて食べられない。

「……………っ」

「どうした？もういいのか？」

食事の手が止まった。

別に満腹と言う訳じゃないけれど…

「そ、そんなに見られてたら食べられない…」

穴が開くほど見つめられたんじゃ緊張して食べられない。


この男の目、苦手。


「食事中に手は出さねぇよ。安心して食え」

「そんなんじゃ…」

でも、確かにまだ満腹にはなっていない。

泣き叫び疲れていつもより空腹は感じてるはずなのに。


私をモデルにするとか言ってたけど、食事してる姿なんか見てどうするんだろう。

人形作りの参考になるとは思えないんだけど。

第一、人形は食事なんてしないのに。


……でも、もういいや。

見るなら好きに見ればいい。

こっちはずっと空腹だったのだから…


男の視線は無視する事にしてデザートのカットオレンジにフォークを刺し口へ運ぼうとした、その時だ。

「ん…、あっ！」

口許までオレンジを持ってきた時、フォークの先端からオレンジが滑り落ちてしまった。

オレンジはそのまま私の体を滑り、ベッドにバウンドして床に落下。

口許から服、ベッドの上までオレンジの果汁でベタベタ。


…やっちゃった。

無視するとは言えあの男の視線が気になって手が震えてしまった。

食べ溢しを見られるなんて、恥ずかしい。

ベッドから床に落ちたオレンジを拾おうと前屈みになりベッドから身を乗り出すと…


「じっとしてろ…」

「え…っ？あ━━━━━」


ギシッとベッドが軋んだ。

ふっと見ると、男が私の真横に腰を降ろしていた。