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Dolls…
第25章 最後の真実
「な、何の話だ…?」

「お前が知ってること全てが真実じゃないって事だ」





椎葉さんの言葉の意味。

それって、安藤さんが話してくれた事だけが真実じゃないって事?

本当はもっと別の事情があるってこと…?


ゆっくりと見上げた椎葉さんの表情は、怒ってるわけでもなく、悲しんでるわけでもなく、いつにも増して冷静で落ち着いた表情を見せていた。

今までにないくらいに穏やかな表情。


「椿は返してもらう。しばらくは俺の前に顔を見せるな」

「━━━━━っ!!」


私を抱えたまま椎葉さんは再び歩みを進めて行く。

安藤さんは…、してやられたりと言ったところか、その場に踞り呆然と椎葉さんの背中を眺めているだけだった。

どこまでもムチャクチャな事をする椎葉さんを下手に怒らせたらどうなるかを身を持って体感したのだから。

よくキレる頭と常識はずれの行動力で手段を選ばず突っ走る性格。

これ以上、怒らせない方が身の為だと…。





椎葉さんの肩越しに、踞る安藤さんを見つめ返した。






きっと、安藤さんは安藤さんなりに苦しんでいたんだ。

私と奈々さんを重ねてしまうほどに、奈々さんを止められなかった自分を悔やんでいたに違いない。

やり方は卑怯だけど、安藤さんの気持ちは痛いほどわかる。

私だって、椎葉さんに見限られたと思ったときはそんな気持ちだった。

今の安藤さんと同じように自分を攻めて、何も手につかなくなった。





だけど、安藤さん…

ごめんなさい…。

私は…、奈々さんの変わりにはなれない。

私が好きなのは椎葉さんだけ。

昔も今も椎葉さんだけ。

私は奈々さんにはなれない。








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