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第26章 Dolls…

「ったく、よく降る雨だ…っ」

ぶつぶつと文句を言いながら私を抱えたまま椎葉さんは屋敷の中へと一目散に走り出した。

腕に私を抱えてるというのに、そんな事感じさせない程に早い足取りで。





私…、帰って来れたんだ…。

椎葉さんのお屋敷に。

安藤さんのマンションから助け出されたとは言え私は椎葉さんに振られた身だ。

まさかまた、ここに戻って来れるなんて思っても見なかった。

だとしたら、さっきの足場の悪い坂道をあんな慣れたハンドルさばきで運転出来て当然だ。

夢にまで見た椎葉さんの腕の中、浮世離れしたこのお屋敷。




何もかもが懐かしくて…、冷たい雨に打たれてるはずなのに心は暖かかい。

無意識のうちに椎葉さんの胸元をグッと握り締めていた。

腕の中とは思えない程にバランスは安定してるのに、こうでもしてないとまた椎葉さんの元から離されてしまう、そう感じた。




戻って来れたんだ…。

椎葉さんの元に…。

また、椎葉さんの元に戻って来れたんだ…。

髪を伝い頬に流れる冷たい雨粒とは別に、瞳から溢れる涙は何故か暖かい。












━━━━━キィッ…



重そうな扉の開閉音。

ほんの数週間前は、この玄関ホールから外の世界へ出て行った。

けど、こうやって舞い戻ってしまった。


何だか…、凄く新鮮に感じてしまうのは何故だろう？


「く、くすくす…」

「どうした？」

「いえ、ちょっと…。くすくす…」


椎葉さんの腕の中で、私はこの新鮮さの理由を考えていたが、あることに気づき思い出し笑いを堪えられなくなってしまったのだ。