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Dolls…
第26章 Dolls…
ここに住んでた頃はこの玄関ホールは何度も見てたし、今更驚きもしないけど…

よくよく考えたらこの玄関ホールをくぐって椎葉さんの屋敷に入るのは初めてかも知れない。

いや…、初めてだ。

ここに初めて来た時は椎葉さんにスタンガンで襲われて、気付けばこの屋敷の一室に監禁されてた。

それが全ての始まり。

そして、安藤さんの手に寄ってこの屋敷から出て行くときはこの玄関ホールから出て行った。


…普通は逆だ。

この玄関ホールから出て行った事はあっても、入るのは今日が初めて。

「くすくす…」

「変な奴だ。…すっかりびしょ濡れだ。先にシャワーでも浴びるか?って、お前はその体だしな…」


あ…、そう言えば私も椎葉さんも既にびしょ濡れだ。

車を駐車させてからここまでそんなに距離はなかったはずだけど、この豪雨じゃびしょ濡れになっても仕方ない。

私はまだ動けそうにないし、このままじゃ椎葉さんが風邪ひいちゃうし。

「だったら、椎葉さんが先に」

「え?」

「私は別に━━━━」



そう言って椎葉さんの顔を見上げると…








━━━━━ドクンッ!




あ…、やだ…っ。

何か…、私の心臓がおかしい…。








「そうも行かねぇだろ?お前だってびしょ濡れだし」





いつもはしっかりとセットしてる椎葉さんの前髪が…、雨に濡れたせいで前下がりに垂れてしまってる。

そして、髪を伝い雨の雫がぽたぽたと滴り落ちている。

そんな椎葉さんを見てるだけで、何だか…、胸が締め付けられそうなほどにドキドキと高鳴っていた。



「椿…?」



真っ赤に染まる顔を見られたくなくて思わず俯いてしまった。

そんな私を心配して椎葉さんが私の名前を呼んでくれた。





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