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Dolls…
第26章 Dolls…
「どうした?酔ったのか?」

「いえ、べ、別に…」





どうしよう…。

椎葉さんに名前を呼ばれるのなんて慣れてるはずなのに。

何だか今は…、名前を呼ばれただけで胸がドキドキして、椎葉さんの顔がまともに見れない。





「━━━私、シャワー浴びるほど濡れてませんし…、タオルでも貸してくれたらそれで…」


体は椎葉さんが私を庇うように包んでくれたし、実際に濡れてるのは髪の毛だけだ。

髪の毛だってそんなに濡れてないし、雨に打たれたのは一瞬だけだから体もそこまで冷えていない。

それに私の体はまだ動かないし、シャワーなんて大袈裟なような気がした。

それに、私より椎葉さんの方がびしょ濡れなのだからシャワーを浴びるとしたらまず椎葉さんからだ。


「椎葉さん、先にどうぞ…」


とにかく、早く椎葉さんから離れたかった。





今更だが、椎葉さんの腕に抱かれて

椎葉さんの息遣いまで感じれそうなほどの距離で触れ合えてる。

そう思っただけで頭が沸騰しそうだった。



早く…、早く降ろして…。

心臓も頭も、熱くて苦しくて壊れてしまいそう…。

まだ夢を見てるみたい…。





「…悪いが、シャワー浴びてる暇も余裕もなさそうだ」

「え…?」

「言っただろ?全てを話すと」








……………っ。






椎葉さんの目はいつにも増して真剣そのものだった。

冷え切った体を温める余裕もない、らしい。

まるで生き急ぐかのような椎葉さんの苦しみ。


いつもの椎葉さんからは考えられない余裕のなさに私の胸は更に激しく脈打ち出し言葉にならない不安が押し寄せてくる。

冷静な椎葉さんの余裕なさげな雰囲気が私を追い詰めて行くようだった。



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