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Dolls…
第26章 Dolls…
椎葉さんの全てを知った上で全てを受け止める。
そう決心したはずなのに、今更怖くなってる。
気を抜けば恐怖に飲み込まれて逃げ出してしまいそうになる。
「あの…」
「どうした?やっぱりやめておくか?」
私に無理はさせられないと思った椎葉さんが私を気遣うようににこりと笑ってくれたが、その微笑みはどこか悲しげだ。
しっかりしろ、私…っ!
椎葉さんの全てを受け止めて椎葉さんを楽にしてあげたいって決心したところじゃないっ!
「大丈夫です…、だって…」
決心した。
何があってももう2度と椎葉さんの元を離れない、と。
椎葉さんを無くす以上に怖いものなんてない。
椎葉さんと別れたあの日、身を引き裂かれたかのようなあの痛みと恐怖に比べたら、あれ以上に怖いものなんて私には存在しない。
「何を聞いても…、椎葉さんのそばにいます…っ!」
…って、決意の一言の割りには恥ずかしさと気まずさで椎葉さんの胸に顔を埋めてしまい、椎葉さんの目は一切見れてない。
私の決意は椎葉さんに伝わってるのだろうか…?
自分の不甲斐なさに思わず落胆してしまいそうになった。
しかし、オロオロする私を余所に椎葉さんは…
「…ありがとう」
━━━━━…?
え…?
今、椎葉さん…、何て言ったの…?
それは、椎葉さんの口から絶対聞くことなどないと思っていた一言だった。
今、私に"ありがとう"って…?
あの椎葉さんが私に…?
私お礼を…?
う、嘘だ…。
絶対聞き間違いに決まってる。
でも…、確かにハッキリ聞こえた。
椎葉さんが私に"ありがとう"って…。