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Dolls…
第5章 静かな晩餐
自分で自分に寒気がした。

この人の瞳を見てるだけで、まるで何かの魔力にかかったみたいに自分が自分で無くなってしまいそうな気がする。

引き込まれてしまいそうになる。

元々端整な顔立ちではあると思ってた。

外国のブランドモデルみたいな顔立ちだけど…、あの瞳を見てるだけで変な気さえ起こしてしまう。




…この人の目はあまり見たくない。

見ないようにしなきゃ…、じゃなきゃ、あの人のペースに引き込まれてしまう。









グラスに飲み物を注ぎ、そのまま2人して席についた。

2m以上はありそうな長いテーブルの端と端、相手の表情すら見えないくらいの距離のテーブル。

真ん中に置かれたキャンドルの炎が私達だけしかいないダイニングを照らしてる。

テーブルに置かれてるのは美味しそうなお肉料理。

季節野菜のソテーを添えたステーキ。


…お洒落な料理。

ナイフとフォークを使う洋食なんていつ以来だろう。

少なくとも東京に来て独り暮らしを始めてからはこんな料理は食べてない。

本当なら嬉しいはずの料理なのに…。

「どうした?食が進んでないが」

この長いテーブルの距離でよく私の動きが見えるものだ。

「そんなこと…」


だって、東京に来てこんな豪華な食事は初めてで、それにこんなお洒落なダイニングで食事するって事も初めてで

初めての事だらけで食事の手が進まない。

それに、何より

一緒に食事してるのがこんな人なんて、さっきまで感じてた空腹が一気に失せた。

こんな酷い悪魔みたいな人と一緒にこんな豪勢な食事なんて…。

「本当に食欲が…」

「ちゃんと食ってもっと太れ。骨と皮だけの体なんて抱いてても楽しくねぇし」

「………っ!」










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