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Dolls…
第5章 静かな晩餐
「あの、この料理は…椎葉さんが…?」
この屋敷には椎葉さんしか住んでないはずだし、男性の手料理にしては少々お洒落すぎるような気もするけど。
「あぁ。週に何度かハウスキーパーが来て作り置きしてくれてる。忙しくて家の事をする暇がない」
…そりゃそうか。
こんなお金持ちならお手伝いさんぐらい雇ってるし、人形作りの仕事も忙しそうだし。
「お手伝いさんは1人なんですか?」
「さぁな。たまにしか来ないし家の事は任せてあるが顔を合わせることはそんなにない」
…本当に人が嫌いなんだ。
いくら忙しくて家の中のことは任せてるとは言えどんな人物かぐらい気にならないのかな?
人形にしか興味がないんだ。
「お前は?独り暮らしなのか?」
「え?…あっ」
今度は椎葉さんからの質問。
急に椎葉さんの口から質問が来てついびっくりしてしまった。
私から始めた会話だけど、急に聞かれたら慌ててしまう。
「えっと…」
え…、あっ、そっか、私の事か…。
目をオドオドさせながら返答を考えた。
自分の事なんだから考える必要もないのに。
「独り暮らし、です…」
「実家は?東京なのか?」
「ここから新幹線で移動するくらい離れた田舎です…」
「両親と住んでるとなると今頃捜索願いが出されてたかもな」
……私、何でこんな人と会話をしてるんだろう。
さっきまでの沈黙は心苦しかったけど、急に会話をし出すと妙に緊張してしまう。
「美大志望とか言ってたな。その為に上京か?」
「はい…」
私が持ってきたスケッチブック、昨晩この人に見られちゃったんだ。
この屋敷を描きたくて忍び込んだのが始まりだった。