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Dolls…
第5章 静かな晩餐
遠退く意識の中で私の名前を呼ぶ椎葉さんの声だけが響く。
ぼやける視界で最後に見たのは、私を見下ろす椎葉さんの顔。
私は、人形のモデルの為に酷いことをされ続けた。
人形のモデルなんかになる為に上京したんじゃない。
こんな人に好き勝手されて、おまけに体調不良で倒れちゃって、最悪だ。
本当なら今頃は、梓とわいわい話ながら家路に着いていたはずなのに。
こんな人と食事して、おまけに風邪まで引いて…。
「━━━━━き…つば……きっ」
……椎葉さんの声が聞こえる。
聞きたくないのに、ムリヤリ鼓膜にダイレクトに届いて来る。
聞きたくない…。
聞きたくない…。
「つば…━━━━椿…っ」
まるで、水の中にいるかのようなこもった声。
それでも、私の名前を呼んでることだけはわかった。
椎葉さんが、私の名前を呼んでる。
だから…、呼ばないでってば。
彼氏や親友や親でもないくせに、気安く私の名前を━━━━━━
「椿っ!」
━━━━━━━━━ハッ…
「気がついたか?」
椎葉さんの声に引き戻されるかのように、意識がハッとした。
気づくと…、私の目に飛び込んできたのは大きなシャンデリアがぶら下がった高い天井。
「あ…、ここ…」
起き上がろうとすると、頭に酷い痛みを感じた。
「いっ…」
「まだ起きるな。熱があるみたいだから」
……熱?
ぼんやりする頭の中を必死に整理した。
靄がかかったみたいに上手く考えられないけど…。