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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第4章 【弐】
だが、嘉宣は真面目な顔で応えてくる。
「幼き日のことを思い出していた」
「ご幼少の頃のことを?」
「そうだ、俺が七つ、八つの頃のことだったか。奥庭に金盞花が咲いていただろう? あれを摘んで花束にして母上に差し上げたんだ。元々、姉上のあのお部屋は母上がお住まいだったゆえな」
「春瑶院(しゆんよういん)さまは、さぞかしお歓びになったでございましょうね」
何の気なしに相槌を打っただけだったが、その刹那、嘉宣の声が低くなった。