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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第4章  【弐】
 孔子を誰よりも尊敬する謹厳な父から、橘乃は物心つかぬ頃より常に言い聞かされて育ってきた。親を尊ばぬ者こそ、不幸極まりなき輩だと。だが、子を慈愛を込めて大切に育てる両親ばかりだとは限らない。どのように無慈悲な親だとしても、それでも、子は親を尊ばねばならないのだろうか。
 嘉宣の話を聞いて、橘乃はふと固く信じてきた父の教えに疑念を抱いた。
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