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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第2章 【序章】
 橘乃が好きだと語った花が見当たらないことが、やはり、これは紛れもない現実なのだと彼に迫ってくる。六年前の橘乃が生きていたあの日ではなく、彼女がこの世を去ってしまって既にいない今だということを思い知らされる。
―嘉宣さま、橘乃はいついつまでも嘉宣さまをお慕いしておりまする。
 最後の別れの間際に橘乃が遺したひと言が耳奥に甦る。
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