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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第4章  【弐】
 浪江の言いたいことは、橘乃にも判った。現在、嘉宣は正室も持たず、側室といえば、琴路と橘乃の二人だけで、子どもはいない。そんな状態で嘉宣の身に何かあれば、木檜家は忽ち断絶の憂き目に遭う。
 一日も早いお世継ぎをというのが浪江だけでなく、木檜家に仕える者たちの願いであった。
 その夜は浪江の進言に従い、嘉宣にはお褥辞退を願い出た。気分優れずと訴える橘乃に、嘉宣からは〝十分養生するように〟と優しい文が届けられた。
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