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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第4章 【弐】
その翌日、木檜家お抱えの奥医師が呼ばれ、橘乃の診察に当たった結果、妊娠三ヵ月との診立てが告げられた。橘乃の懐妊はまだ公表はされず、その事実を知るのは当人の橘乃、更には嘉宣、他には信頼のおける者に限られた。
橘乃から懐妊を告げられた嘉宣は、浪江に負けず劣らず驚喜した。〝ご生誕は来年の六月〟と聞いた嘉宣は橘乃を抱きかかえ、部屋中を回りながら幾度も繰り返した。
「俺もとうとう人並みに父親になるからには、もっとしっかり致さねばな」