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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第4章 【弐】
応えはただ一つ、橘乃の周辺―この上屋敷に裏切り者がいるということだ。その者は恐らく上手く侍女か従者に紛れ込み、こちらの情報を逐一流しているに相違ない。
春瑶院の密偵が上屋敷にまんまと入り込んでいた―、その事実は橘乃と浪江を震撼とさせるに十分すぎた。
「さりながら、お義母上さまの下されたものを無下に扱うわけにはゆかぬ」
橘乃もこういった点は言い出したら、一歩も後へ引かない。
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