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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
 嵐のようなひとときが過ぎ去った後、嘉宣は橘乃の傍らに身を横たえた。橘乃は腹這いになり、嘉宣の胸に顔を近付ける。
 気配を察した嘉宣が橘乃の身体を引き寄せた。
「殿、いつか私に仰ったことをまだ憶えておいでにございますか?」
「―一体、何のことだ」
 嘉宣が橘乃の艶やかな黒髪を手で弄んでいる。橘乃はいっそう嘉宣の方に身を寄せた。
「何か叶えて欲しい望みがあるかと仰せになりました」
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